対人恐怖症とは

人間関係論

コラム1~5
①対人恐怖症って何?
初めまして。講師の田中と申します。普段はカウンセリングの仕事をしています。
今回は、「対人恐怖症」という物についてお話したいと思います。実はこの対人恐怖と言うのは、日本特有の精神疾患であると言われています。ちなみに海外ではそのまま「Taijin kyofusho symptoms (TKS)」と命名されるほどで、それくらい日本でしか見られないものだということです。

さて、「対人恐怖症」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
大抵の人が、「単純に人と会うことが怖い」「人間が怖い」という病気ではないかというイメージを持たれるかと思いますが、対人恐怖とはそういう意味ではありません。人と会うのが怖いというのは正確には「社交不安障害(SAS)」と呼ばれます。

対人恐怖症とは、厳密は「相手に迷惑をかけることを恐れるあまり、人と距離を置いてしまう病気」です。このニュアンスは海外の人(特に欧米の方)にはなかなか理解されにくいですが、いかがでしょうか?

 日本は「恥の文化」というのがあり、日本人は相手に迷惑をかけないようその人の空気を読んで行動するという文化が根付いています。例えば、相手の機嫌が悪いときに、「何か失礼なことをしたのかな?」と気にしてしまう人は多いのではないかと思います。ちなみに欧米では「相手の機嫌が悪いのは相手が選んだことだ」と割り切って考えてしまう方が多いようです。

 日本では「相手が勝手に機嫌を悪くしたんでしょ?」と考えて行動すると間違いなくトラブルに発展します。例えば、親子関係で両親が不機嫌にしていると「僕が何か悪いことをしたのかな?」と考えてしまう子どもは大変多いものです。また、怒られた時、自分に非がないのにも関わらず、悪いことをした気分になる人もいると思います。

 このような感情は一般的なもので、特におかしなものではありません。
ただ、これらの感情が高じてしまい、「私のせいで周りに迷惑が掛かってしまう。人に嫌われてしまう。」と常に思ってしまうようになると、人と適切に関わることができにくくなります。すると、「私のせいであの人に嫌な思いをさせてしまった。もうだめだ。嫌われてしまう。」と悪循環を起こしてしまいます。

 これが対人恐怖症の基本的な心理メカニズムです。
この悪循環を続けていくと、だんだんと「人から嫌われている」という信念を抱くようになり、人と距離を遠ざけようとしてしまいます。その様子は「人間を怖がっている」ように見えます。しかし、その背景にある心理メカニズムは「人に迷惑をかけることを恐れている」ところにあります。

 このコラムでは5回に分けて対人恐怖とその対応についてお話したいと思います。

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対人恐怖症の特徴

あがり症と赤面恐怖について

 ダイレクトコミュニケーション講師の田中です。
 前回、対人恐怖症についてお話しました。対人恐怖症とは「相手に迷惑をかけることを恐れるあまり、人と距離を置いてしまう病気」だとお話しました。特に、「自分のこういう症状や反応が相手に迷惑をかけているのではないか」とひどく意識した場合に、対人恐怖症の症状は特に出やすくなります。

 その症状は人によって様々なタイプがあり、そのタイプによっていろんな名前がつけられています。
一番有名なものは「あがり症」「赤面恐怖」です。これは誰かと会ったり、人前で話をするときに自分の顔が赤面したり、あがっているのが気になってしまい、それによって相手に嫌な思いをさせていないかと気になってしまい、かえって緊張してしまいさらに赤面がひどくなってしまう悪循環を繰り返してしまうタイプです。
また、「視線恐怖」と呼ばれるものでは、自分の視線が相手の機嫌を悪くさせているのではないかと気になり、さらに一層自分の視線を気にしてしまい、上手く人と関われなくなる場合があります。また、逆に相手の視線が気になってしまい、上手くコミュニケーションが取れなくなる人もいます。この場合も「相手に迷惑をかけているんじゃないか」という思いが背景にあります。
そのほかにも雑談恐怖症(自分が雑談が下手だから、下手にしゃべると相手に不愉快な思いをさせてしまうからしゃべれない)、電話恐怖症、吃音症と言うものもあります。

コミュニケーション以外では自分の体臭を気にしてしまう体臭恐怖症や、おなら恐怖症と言うものもあります。ただ、どれも根底には「自分の特定の症状や反応のせいで相手に迷惑をかけるのではないか」という思考の癖があります。

そして、対人恐怖症になりやすい人に共通していることがあります。それは「相手の気持ちや雰囲気を敏感に察知する繊細さ」です。そのため、周りの雰囲気に敏感になりやすい思春期の女性がなりやすいと言われています。もちろん、成人の男性や女性でもなります。特に周囲の雰囲気や相手の気持ちに敏感な人、繊細な人ほどなりやすいものなのです。

 さらに、対人恐怖症には中途半端に見知っている人に対して症状が起こりやすい特徴があります。大勢の前で緊張してしまうのは、厳密には対人恐怖症ではありません。会社で顔は見るけれどしゃべらない人、恋人の友達、配偶者の親戚など、知ってはいるけれど普段関わりがない人とコミュニケーションを取らないといけない時に、症状を意識してしまい、相手と関わることに恐怖を感じてしまうと、対人恐怖症となります。

 さて、次は対人恐怖症の対処法をお話したいと思います。

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